「Aisha of story~再会 ・・・」




そう ・・・

彼と出逢ったのは ・・・

今から10年前 ・・・

彼は せわしく店の厨房で働いていた ・・・



この物語は

僕がよく行っている カレー屋さんの話。

当時、僕は この土地に引越してきたばかりで

右も左も わからなかった。

もちろん知人もいない ・・・



困ったのは飯だ。

炊飯器もない。

コンビニ弁当は嫌だったので

よく外食をしていた。



僕の住家の近くにカレー屋を見つけた。

カレーは大好きなので

僕は迷わず 店内に入った。



ここのカレー屋は自分の好きなようにカレーに

トッピングを追加することができる。



ビーフカレー 600g

チーズダブル

ツナ

半熟たまご

納豆

辛さ普通 ・・・



これが僕のメニュー。

あれから10年経った今でも食べ続けている。

カレーが運ばれてきたら

辛い香辛料を自分でふりかけて

醤油をかけて食べるのである。

当時、醤油はコーヒーとかに入れる

砂糖の長細いスティックパックみたいのが

備え付けで置いてあった。

僕はそれを 5本使っていた。



彼は知っていた ・・・

僕がいつも カレーに醤油をかけて食べるのを ・・・

そして 彼が厨房でカレーを作っている時

カレーと同時に醤油を僕のところに

持って来てくれるようになった。

僕は それがすごく嬉しかった。

大袈裟ではあるかも しれないけど

涙が出るほど 嬉しかった ・・・



人間誰しも いつか 独りになってしまうことがある ・・・

親元を離れ 会社勤めに疲れ果て ・・・

1日の楽しみなんて 食べることしかなかった。

僕はもともと 人付き合いが下手で

自分からも高い壁を作って なるべく傷つかないように・・・

1日が無事に終るようにって・・・

人と接するのを避けてきた ・・・



彼が僕に醤油を差し出してくれたことが

自分の存在を理解してもらえてるように

都合よく解釈していた。

それでも 本当に嬉しかった ・・・

もちろん彼がいない時もあった。

すると違うバイトの子が もってきてくれたのである。

これには ビックリした。

彼が店の中で 引継ぎをしていたのである。



その出来事が もう何ヶ月も続いた ・・・

バイトが辞めて、新人のバイトに変わっても

途切れることなく 僕のカレーには醤油がついてくる。



そう ・・・



10年経った今もだ ・・・



でも彼に ありがとう の一言も言ったことはなかった ・・・

なんか 好きな女の子に告白する時みたいに

ドキドキした。



それでも僕は 何も言えずにカレー屋に通い続けた ・・・



そして いつの日か 彼の姿が厨房から消えた ・・・

僕は他の店員に聞くことすらできず

いつもの様に カレー屋に通い続けた ・・・



辞めたのかな ・・・



そう想いながらカレーを噛み締めた ・・・

最後ぐらい 「 ありがとう ・・・」って言いたかった ・・・



彼は僕を救ってくれたのである。

また大袈裟かもしれないが

カレーと彼がいなかったら

今の僕は ない ・・・

断言できる。

くどいほど書いているが 本当に嬉しかったのである ・・・

久々に 人間に逢った気がした。



それから何年も経っても ・・・

僕はカレーを食べ続けた。



そんな夜 ・・・



彼が私服姿で店の前で友達と二人でいたのである。

僕は自転車をとめて

思い切って声をかけた ・・・



僕 「あの ・・・間違ってたらすみません ・・・

   この店にいらっしゃいましたよね ・・・」

彼 「はい。」

僕 「あ、あっ、僕、ダブルチーズの僕です ・・・」



あの時、もう少しマシな自己紹介ができなかったのかって

今でも思う・・・。笑



彼 「覚えてますよ。」

僕 「醤油 ・・・ありがとう って ・・・

   ずっと言おうと思ってて でも言えなくて ・・・

   店にいなくなってたから辞めたのかな ・・・って。」

彼 「車の会社に就職したんです。」

僕 「お名前は ・・・」

彼 「飯塚っていいます。」

僕 「僕は竹内と言います ・・・飯塚さんが辞められてからも

   醤油がずっと引き継がれていて ・・・

   僕はすごくうれしかったんです ・・・

   あ、あっ、ありがとう ・・・」

彼 「竹内さんのメニュー今でも覚えてますよ。

   ビーフ600g、チーズダブル、ツナ、半熟たまご

   納豆・・・

   あと・・・醤油5コ !!!」



彼はニコニコしながら僕に得意げに言ってみせた。



完璧である。



たまに この長すぎるメニューを自分でも忘れることがある ・・・

そうだ 飯塚さんがいた頃には

飯塚さんから「いつものでいいですか ?」って

よく僕に言ってくれた。

これもまた 僕は嬉しかった。

その頃から僕は この長いメニューを言わずに済んだのである。



それから僕と飯塚さんは少しばかり立ち話をして別れた。

彼もちょくちょくこの店に客として来ているらしい。

こんなことも彼は言ってた。



「竹内さんのカレー ・・・僕も真似して醤油かけて食べるように

 なりました。でも、当時、あんなカレー食べてばっかで・・・

 体おかしくなんないのかなぁって・・・正直思ってました。笑」



確かに ・・・である。笑



それからも飯塚さんとは店で見かけたりしたら

挨拶をするようになった。

後に、この店の店長が飯塚さんと僕の話を飯塚さんから

聞いたらしく 何年も通ってるけど

初めて僕のところに帽子をとって挨拶にきた

「うちの子達に いい話をしてもらってありがとうございました。」

って ・・・

僕は恐縮した。



それからも店にいまだに通って例のカレーを

食べ続けている ・・・



そして ・・・



つい先日 飯塚さんとの対面をした時の夜の話である。



そう ・・・



彼はカレー屋の制服を着て働いていた。



僕 「えっ !!! 何やってんのー ???」

彼 「戻って来ました!!!」

僕 「会社は ???」

彼 「辞めました。」

僕 「う、うっそぉー !!!」

彼 「竹内さんと あん時逢ってから、ずっと考えてたんです ・・・

   僕も竹内さんに あんな風に言ってもらって ・・・

   竹内さん ・・・カレー作る人が違うと味が違うって

   言ってくれたじゃないですか ・・・

   僕も嬉しかったんです ・・・」

僕 「・・・。」



いや、本当ね ・・・

言葉出なかったです ・・・

ただ僕は うなずいているだけで ・・・

10年前に たった一人の人間に出逢っただけなのに ・・・



当時、飯塚さんに一度 「再会」した時 ・・・

この 哀写 で文章を書いてみようと

作成していたのですが

パソコンが壊れ ・・・

僕の そんな想いも一瞬にして消えてしまったんです ・・・



今 ・・・
 
 

その意味が この 「再会」 のためだと ・・・

気付き ・・・

35過ぎの おっちゃんですが ・・・

やや 半泣きでキーボードを打ってます ・・・笑。



今日は いい ため息 ・・・

こんな ため息もあるんですね ・・・



最後に ・・・



飯塚さん ・・・

これからも頑張って !!!

君なら うまくいく ・・・

必ず ・・・



この文章を 哀写 に書くことを迷いましたが ・・・

哀写 は 僕の一部 ・・・



だから ・・・



君にも 伝えたくて ・・・





哀写  竹内 章 ・・・




Aisha of story~再会・・・ 完




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